駅前からひとりバスに乗った 土曜日の夜が少し深くなる頃 絹糸のような雨のせいで 窓が曇っている 乗客は私ひとりで ルート案内のテープが響く 私は思った このバスは本物なのかと 私はまだ生きているのかと よっつめの停留所で降りる時 私はバックミラーに向かって 手を振った 小柄な運転手の影が お辞儀をしたように見えたが それが人なのか何なのか 分らないまま バスは夜の雨に消えて行った