火山島で
火山島の南側は
垂直に海に落ちている
北側の少しなだらかな斜面には
茶褐色の家が建っているが
窓は全て北を向いていた
港の近くの市場は賑わっていて
半干しの魚の匂いと
油を含んだ麻袋の匂いがした
果物屋の九官鳥は目が合うと
「僕の若い頃には」と言った
「では三日後に迎えに来ます」
と言い置いて青年は去って行った
三日経っても青年は姿を見せず
来るべき船も来ず
市の立たない広場に
砂にまみれて
九官鳥の黒い羽が落ちていた
置き去りにされながら
ここで年を取るのも悪くないと思い
火山島がここに在るように
私もただここに在るのも
不思議ではないと思った