ウエールズの犬
マシューの家は
十六世紀のファームハウスで
上の三部屋に人を泊める
窓下に牧草地が広がり
白黒のシープドッグが
羊の最後の追い込みをして
誇り高く戻って来る
窓から「やあ」と声をかけると
「フン」と鼻で挨拶を返す
翌朝しばらく庭で一緒に遊び
車で農場を出てから
鍵を返すのを忘れたのに気付いて
また家に戻ると
犬はけたたましく吠え立てて
すっかり番犬になっていた
ドアを開けたマシューは
「ウエールズ育ちの頑固な奴で」と
犬ごしに鍵を投げるようにと
合図しながら言った
車の向きを返ると
犬は背筋を伸ばして
黙って見送っているのが
バックミラーに映った