ギリシャで道を聞く
村で方向を失って
国道へ戻る道を聞くと
作業場でたむろしていた
五人の若者は言葉が分からず
奥からオーバーオールに
コージュロイのハンチングを被った
ハンサムな老人が出て来て
流暢な英語で得意気に教えてくれた
多分昔、船員だった老人は
「You know」を連発しながら
なぜか
角の付いたままの鹿類らしき頭蓋骨を
小脇に抱えていた
一体何をしている時に
道を聞いてしまったのだろうと
車を走らせながら考えたが
旅と生活の交差する中
老人の口調を真似して
「これは単なる頭蓋骨さ、
You know」などと
オリーブ畑沿いの国道で
新しい流行歌のように
口ずさんでみたりした