もう私の町じゃないのだし だから心いっぱい叫ぶ 声にならない声で あなたが好きでしたと 声は東の国からシベリアを渡って 北海までは届くのだけど そこから先は霧に呑まれて 最初の発音だけが 何とか町に辿り着く あなたの肩をそっと押す あなたは振り返る あの日立っていた 花屋の店先で 不思議そうに少したたずんで やがて店に入って行く 右肩に 赤いほのかな光をのせて