ペリカン
西アフリカの森の中
ヒンターランドと呼ばれる
河の奥地で
薄桃色した二羽の鳥が
飛んで行くのを見た
「ペリカン」と
案内の少年が言った
大きな嘴に陽を浴びて
間延びしたように立っていた
動物園の鳥の名
私は少年に
「ペリカンは飛べるのか」と聞いた
少年は黒い瞳で私を見つめ
「鳥は飛ぶ」と答えた
鳥が飛ぶ国の少年は
ジープを降りると
釣竿を片手に
私に向かって
もうひとつの手を振って
河めがけて駆けて行った
私は森の河の上だけ
穴のぬけたように広がる
もうひとつの河のような青空と
黒い背中を光らせて走る少年を見ながら
いつ来るとも分らない
次の薄桃色の鳥を待っていた