ステンドグラス
ステンドグラスを通った光は
石を敷き詰めた床に影を映した
聖者のしぐさは
グラスよりも輪郭を淡くして
宗派が違うので祈りをためらい
床に落ちる光を浴びていると
白いワイシャツに紺のカーディガンの
白髪の男が軽く会釈して
パイプオルガンの段を昇り
バッハの音が反響して
ステンドグラスの影が揺れた
三曲弾き終えて男は降りた
「神様のために弾いたのですね」
「はい、半分は神のために
半分はあなたのために」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
電車の窓から眺める教会は
冬の黄昏にかすんでいた
こんな風にして神は時々
私の肩にそっと手を置く