雪が消そうとしているのは コンクリートの工場ではなく 枯木ばかりの山ではなく 寒色や暗い色のコートばかりが行き交う 駅前の商店街ではない
雪が消そうとしているのは 流れる時間だ 雪を見ていると 思い出よりも 思い出せない記憶に 心がもどかしくなるのはそのせいだ
夜降る雪を見つめてはいけない それは未来の時をも奪う その症状が軽ければ 急な眠気とあくびで済むが 症状が重ければ 次の夏は 痛いほどに 青ざめた季節となる