再びゴメレス坂へ
エミリオの店に行く時には、ゴメレス坂下にある普通のアイスクリーム屋のラムレーズン入りバニラアイスを食べることが多い。
「フィオール・ディ・グラナダ イタリアのアイスクリーム」と看板に記してあった。取り立てて美味いとかではなく、回りにも何軒かおしゃれなアイスクリーム屋ができているので単なる習い性なのだが、今回立ち寄ったら残念にもラムレーズン入りのがなくなってしまった。次回からはどうしようかと普通のバニラを買って近くのベンチに座りながら考えてしまった。
ここはプラサ・ヌエバ(新公園)なので多くの旅行客や地元の人たちが集まるところなのだが、路上にはゴミが殆どない。残飯やビニール袋、紙コップ、缶などのポイ捨やそれらの漂着物などもない。裏路地に入ってもないし、マヌエル家のある住宅街にも気になるゴミはない。
路上清掃員が行っていて、各所あちらこちらにゴミ箱があるからだと思う。
スペインは、飲食店を含め店内全てが禁煙なので、屋外で吸っている人や歩きタバコも見かけるが、最後まで吸い切ってからポイ捨てするのでフィルターのみが落ちていることもある。しかし灰皿が付帯しているゴミ箱が多いので、歩きタバコの人たちは、そこで吸い殻を捨てているのが多く、大変マナーの良い素晴らしいスペイン人と言える。
しかしゴミに関しては、日本のような細か過ぎる分別はまだなく、一般ゴミ、缶、瓶の3種に分けられたゴミ箱もあるが、まとめて1つのゴミ箱が多い。
エミリオの工房内の写真が1枚重複してしまったが、小物はだいたい2.5(410円)~3.5ユーロ(570円)になっていて、寄せ木細工のコースターの3.5ユーロ(570円)にはびっくりしてしまった。いつの頃のを言っているのだ?にはなるが、35年前の1枚100円の感覚が抜け切れないので、友人達への土産として例えば10枚ぐらい買うとかが難しくなった。これって一種のインバウンド?
1枚のコースターが570円というのは、寄せ木細工という工芸品から見ればとても安いと言えるが、昔から買っていたりしているので、高くね?と思えてしまう。
昨日行ったCastañeda(カスタニェーダ)の帰りに、「ケン、明日も食事しないか」と誘われた。ゆえに連チャンでゴメレス坂を登った。日々歩数を稼いでいる。海外旅行ってスポーツかも。
ゴメレス坂やマニエルの家へのとんでもない急坂も上る時には、その坂下にて「よし、これから登るか!」と、心の中で決意表明をしなければならない。そのまま上り始めてしまうと、途中でバテて大休憩となる。決意表明すると小休止になる。
連れてゆかれたその店は、家族で来るようなレストランであった。
オードブル的に気軽なバルで一杯やって、別のちゃんとした場所でメインディッシュ的に正餐をする、というのがいつもながらのエミリオの歓迎スタイルなのだが、筋を通すそれに頭が下がる。
ミニチュアパエジャ平鍋に入った突き出しタパは、「イカ墨ライス(Arroz con calamares)」と言っていた。イカ墨パエジャの具を全て抜いたシンプルなモノで、上にかかっているのは、ハンバーグでいうところのデミグラソースみたいなもの。
イカリングフライと一緒に並んでいる煎餅みたいのは、デカ茄子をスライスしたフライで、ソースのようにかかっているのは、mielと言っていた。mielの意味は蜂蜜・糖蜜・シロップなどがあるが、私にはメープルシロップの味がした。
途中で気付いて撮ったのは、コロッケ(croqueta)だが、中身はクリームコロッケではなく普通のポテトコロッケだ。エミリオ曰く、日本のコロッケと同じ認識で、このような調理方法をコロッケと言うらしいが、先述のマヌエルの説明と違っている。今までは、スペイン人の説明は十人十色の時が少なくないと思っていたが、こちらの稚拙なスペイン語にも問題があると思った。ちゃんと質問しろよ、ちゃんと聞き取れよ、と。
モノクロをやっていた時は、日常チャメシゴトにPRESTO400をLeica M6に詰めてスナップをしていたけれど、モノクロをやめてカラー(デジタル)になったら、写真に色が付いていることにどこかしら仕事っぽく感じ(一種の職業病かも)、無料報酬の写真撮影か、と思うようになって10年ぐらい経ってしまった。
最近では、敢えてそれを避けるように愛機はiPhoneとなり、今回のアンダルシア旅行も、デジカメ携行せずiPhoneオンリーになった。
2週間の旅行だが、2つの町にだけ滞在し、特に観光名所等に訪れる予定はないので、それを旅行と言えるのか?という不安がいつも微小にも感じたりするので、何かしら旅行っぽい写真も撮ったりもする。
ひしめき合う建物を撮るには望遠が有効だなぁ、などと仕事っぽく思いながらiPhoneの77mmでスナップすると、果たしてそれっぽい写真が撮れるけど、自分への記録なので十分だ。
グラナダのお手軽なメインスポットと言えば「イサベル女王とコロンブスの像」だ、と勝手に思っているので、グラナダを訪れる度にここを撮っている。
観光スポットの本家はアルハンブラ宮殿なのだが、これが今すごいことになっている(プラド美術館なども同じみたいだが)。
同じグラナダ行きの飛行機で、お母さんと娘さん2人の日本人と話をしたが、そのお母さん曰く、何処経由からか分からないけどアルハンブラ宮殿の入場予約をしたら一杯だったので、そして、現地アルハンブラツアーに申し込んだら、後にキャンセルとなったそうだ。
私はアルハンブラ宮殿の公式サイトからカード決済で予約できましたけど、と言ったら「どのくらい前からですか?」と聞かれた。
5年前の2月に娘の卒業旅行で行った時だけど、1ヶ月前にその公式サイトを見れば、該当日前後はガラガラだったので簡単に予約できたのだけど、5年前と今では混雑度が違っているのかも。
エミリオとの正餐を終えて時計を見たら16時前。
グラナダ中心街からマヌエルの家のあるカハル村へのバスは1時間に1本で、この時は16時半のがあった。昨日同様にエミリオと一緒にゴメレス坂を上って店まで行って別れれば、そこからバス停へは30分なので、次の17時半に間に合う。
しかしこの日は、酒を飲みたくないぐらいの風邪を引いた体調不良だったので、そのレストランでは生ビールを1杯飲んだあとにミネラルウォーターを頼もうとしたのだが、エミリオに先をこされ、いつも家で飲んでいるワインの3倍ぐらい美味いのを注文されてしまった。
飲みたくないけど美味いと感じて飲める感覚は、風邪の程度を知る目安になる。美味ささえも分からないようになると深刻な風邪になると。
しかたなくエミリオにその事情を話したら、近くのバス停まで連れていってくれて「43番のバスに乗れば、そのバス停まで行くので、それに乗りな」とアドバイスしてくれた。そのバス停での行き方のレクチャーをしてくれたのだが、どうやらバスの路線によっては、各駅と準急があり、ここなら全て停まるから大丈夫だ、みたいなことを言っていたら、横に座っていた元気の良いおねーさんが「私も同じバスに乗るから、一緒に行こう」と言ってくれて、そのおねーさんが天使に見えた。
少し絶つとそのおねーさんが遠くに見えるこちらに来るバスを見て「33番が来る。これも(そのバス停に)行くので、こっちに乗ろう」と、10mぐらい離れたバス停に一緒に行った。バスの路線が多いので、バス停を幾つか並べて分けているようだ。
マヌエルの家の近くにあるバス停は、循環バスとする終点なので分かりやすい。中心街からだいたい20分~30分ぐらいだ。
しかし、マヌエルの家はそのバス停から急な坂道1本になっているので、バス停で降りたら、ゴメレス坂登攀同様の決意表明が必須となる。どうして私の友人は急坂に住んでいるのだろうか。距離で言えば、ゴメレス坂の方が少し長いが、勾配角度で言えば、このマヌエルの坂の方が急である。
マヌエルの家のあるエリアは、カハル(Cájar)という村規模の町なので、バル兼喫茶店、郵便局などが1軒しかなく、他は住宅で埋まっている。各家には車があるので、車がないと不便と思うような行動はしない、ということになる。
私には車はないよ。なので、周りにはなにもなくちょっとした買い物もインポシブルなので、前回から親しみを込めて「私の刑務所(mi prisión)」と称し、マヌエルもそれを気に入っているようだ。
しまいには、「私がスイスにいても、鍵を渡しておくからこの刑務所を自由に使ってよ。マリ(かみさん)やリン(娘)と一緒でも良いよ」とマヌエルが言う。「グラナダまで来て、いきなり監獄か」。
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