マリアの生活
金色の西陽の射す部屋で
マリアは本を広げている
目で熱心に読んでいても
神経はそこで止まっている
電車のホームで
マリアは東へ行く電車を待っている
でももう二本やり過ごしたことに
マリアは気づかない
立て続けのコーヒーを
マリアは注意された
それでも飲み続ける5杯目のカップ
マリアはヨハネにメールを書く
たった一言伝えられない
メールを書く
そして抹消する
マリアの肩に
もうお止めなさいと
守護の天使が手を置く
マリアは窓から降る星を見ている
マリアの眼は
古代からある風穴のように空洞
マリアの唇は
忘れられた芥子の花のように
蒼みがかった色をしている