河口の岸辺にまだ在る ボート 半分を水に半分を 葦の茂みに隠して
ある年、私は 思い出と生活をすべて 小さなボートに乗せて 川に流した
アルバムや家計簿や 壁の染みや冠婚葬祭や そんな事柄
澄み渡った群青色の 夜のなか 戻ってきた ボートはそれより蒼く そこに在る
それは 心臓が肺動脈に繋がる 河口のあたり