九時十五分の電車に乗っていたなら 今頃は品川を通過していたのに 地下五階のホームで 途方に暮れている
この駅の壁の向こうは海水なのだと 聞いたことがある 本当か
水圧で壁はもろくも破壊され ホームに東京湾の魚がなだれ込む アスバラガスや カルパッチョや 掃除機も押し寄せる アイロン台の縁に掴まって進む 方向がわからず 渦巻きの中をただ進んで行く
待っていた電車の後部が 渦の中に落ちて行く