少しだけ黄味を帯びた 街路樹は銀杏の木 駅に向かって一直線に それがこの町のわずかな自慢
風がまったくないので 建物は揺れず 街灯は揺れず 人はよろけず 自転車も倒れない
そんな夕刻に ただひとつ 体を震わせるもの 根本から小刻みに揺れている 一本の銀杏
年輪も葉脈も 一緒になって揺れている それは銀杏のクツクツ笑いで もうどうしようもなく笑っている
多分、誰かが明日結婚するか 今日何かが死んだかなのだろう