大 地
目を開けると飛行機は
大地の上を飛んでいた
右方向から
いつまでも沈まない夕陽を浴びて
母鯨のように暖かい機内
窓から見ていた
遠く白く瞬く地上の光
それは鉄道の駅だったり
山羊の鳴く村だったり
石灰岩の石切場だったり
するのだろう
食卓に子どもが初めて一人で採ってきた
リンゴが置いてある
散歩に出た犬が
新しいキノコを見つけて
主人にもどかしげに知らせる
そんな場所のひとつに
私はずっと昔に住んでいたかもしれない
とびきり誰かをいつくしんで
私は口元まで毛布をかぶり
かすかな眠りにつく
母鯨の体内に護られて
飛行場から出たら
いつものキオスクで
黄色いミモザの花を買おう
まるで自分の部屋に飾ろうとしている
帰宅途中の人のように