席取り爺さん
ホームに入ってくる電車
車外からすでに
狙いを定めて乗り込んで
二人分の吊手を
ゴリラのように握りしめ
次のハブ駅で降りる乗客の席を
ほぼ必ず確保する
あとはスヤスヤと眠り込む
あどけない顔
爺さんの電磁波が
私の骨髄を疲弊した
私は乗る車輌を変えた
秋の入口の夜
深夜のスーパーマーケットで
爺さんを見かけた
レジ台に並んだ買い物は
少量のハムとコロッケと
ビール缶一本
爺さんはビニール袋を提げ
弱々しい電磁波をこちらに送り
自動ドアの向こうに消えた
蛍光灯の下の
あどけないはしばみ色の瞳