橋
意気込んで出発した
経済学者からの絵はがき
公文書館で一五世紀の貸借対照表見せてもらいました
それはフラマン語ではなくてフランス語で…
教えたとおり「目の見えないロバ通り」を歩き
ゴシックの石造りの建物に入って行く
少しだけ年老いた元気な経済学者
かつて私は何度その町を歩いたことだろう
路地を歩けば
平行した路地が煉瓦の家々の向こうに見えて
向こうの通行人と私は鏡を見るように互いを見る
ほとんど門を閉ざした修道院から諦めて戻れば
愛しい御子を抱いたマリアさまが夕闇に佇む
人々は天に鐘楼を探しても見あたらず
鐘の音で位置を知る
夜になって
経済学者は運河に掛かる幾つもの橋を渡るだろう
私が案内図にわざとそう記したから
教会裏からホテルに通じる橋の上で
途方に暮れて
咳をしている姿が見える
私が好きな橋の上に佇むように
案内図にそう記したから