向かいのドアが急に開いて 少年がふたり飛び出した 白いシャツと蒼い縞 デニムでできた半ズボン いつもの柄の長すぎる虫採り網を 今日もしっかり携えている 少年Aはベランダの側を通る時 「こんにちは、」 と、馬の眼でみつめ 少年Bは 「まだ病気なの?」 と、手すりの間から 顔だけ突っ込むようにして言った 「ええ」 夏なのにガウンを着て 椅子に坐る病人は応える 少年たちは一礼すると 何故かホッとしたように 青空の中へ駆けて行った 甘苦しい優しさを背中に残して 真夏の青空へ 駆け込んで行った