鳥が発つ
あれは何時のことだったろう
わたしがあの鳥を見たのは
低く草の生えた原野は金茶けて
沼地はよどんで光通さず
そこから
一羽の鳥が
翔び発ってゆく
頭の中の心象風景
それでもわたしには
翔び発つ鳥の羽音すら
耳の近くにきこえるのだ
あれが私の感情の始まり
過去への別れと
新たな出会いの前ぶれに
いつも白い鳥は現れた
一羽で翔び発つ
鳥の哀しさ
行くあてもわからず
ただ翔び発つことだけが
命の全てであるような
羽の躍動
あれは何時のことだったろう
わたしが自分の影を
振り返って見る様になったのは
いつかそれが鳥となって
翔び発ってしまう
そんな日がもうすぐ来ると
ひそかな不安を抱きながら