難しい異国の詩を わけの解らぬままに口にしながら 鵠沼の町を徘徊する あの異国の詩人は 顔に蒼い蔭を宿していた
生け垣の内で 人々は子供を育て 子供は人々を育む 昼のソーメンが喉を通る時 ソーメンに命の糸を結ぶ 異国の詩人の蔭から 彼等は完全に守られている
今日は恋人の家の前も 通るのは止めよう
その代わりあの塀ごしの 夾竹桃の花を盗り 乾いて無臭で無彩な 自分の部屋に置き 異国の詩人を思いながら ひとりで浅い眠りにつこう