天井と壁の境目から 水が少し垂れている やがて天井じゅうの虫たちが 流れに乗って落ちて来る コーヒーカップはカビで覆われ カーペットはカビで覆われ つま先は胞子で覆われてかすんでいる 電話で救けを呼ぼうと ふやけた指をのばすが 喉の奥で胞子が繁殖して 新細胞が熱を持ち 声が銀ネズ色に光って 受話器に届くまでに消えてしまう もうすぐカビだらけの波が来て 家が虫とともに沈んで行くのだ それでも家の中心でボンヤリしている 時だけが過ぎて行く