夏は終わりに近づき 蝉の声は段々消えてゆき コオロギの声が前線を登ってきた 蝉は知っていた 自分が今年最後の一匹だと 昨夜金星の光が あんなに羽に反射した
坂道のクヌギの幹に止まり 登って来る人や下って行く自転車や ちぎれ落ちる晩夏の大気を見ていた さようなら 地球 人々が驚いて語り草にするほどに 高く透明に羽を振るわせた朝