小龍包
ガイドブックや台湾旅行経験友人などから是非と言われてしまうと、どうしても一度は行かないと気が済まなくなってしまうのは人情として分かるが、それが極度になると同伴者はなかなか大変だったりもする。
幾つかの小籠包の店を紹介しても最後はどうしても鼎泰豊のを食べたいとなり、結局連れてゆくも店前には人の群れが渦巻いていてその店先さえにも近づけない混雑さを目の辺りにしてやっと諦め、その鼎泰豊に長年務めた職人が暖簾分けしてもらって開いた「京鼎樓」に連れて行ってようやく叔父の小籠包症候群は解決したのが2年前。
お友だちも最初は鼎泰豊へ、と言うも、京鼎樓への説得にて幸いにもあっさり承諾してくれたのは嬉しい。しかし、鼎泰豊と京鼎樓の小籠包の味の違いってあるのだろうか。鼎泰豊の方が皮が薄いとかがあるかもしれないけどそれは優劣ではなく店のスタイルだ。また、団体しか予約を受け付けない鼎泰豊なら小籠包通の台湾人はそれなりの本場の別な店を知っていると思われる。
今回二度目の京鼎樓だけど、並んだりしたことはない。一階と二階があり、いつも二階なので現地の通な台湾人とかは一階なのかもしれない。何故なら二階は、日本人や白人の外国人や数人などの台湾人の家族連れが多い観がするからだ。そして回転率は早く、だらだらと飲んでいるのは私達ぐらいなもんだ。
小籠包は蒸かしたてのをレンゲの上に乗せて食べ、そこから漏れる汁を味わうとか言うけど、私はネコ舌だから皮が少し汁を吸い取ってぬるくなった頃を食べるのが好きだ。しかし私の場合、上海産点心の一つの小籠包よりも蘇軾の愛した東坡肉の方がメインディッシュだ。角煮なのだがこちらのは肉の塊が大きくそして八角の香りが効いているのが美味だ。
台湾の卵焼きの「菜脯蛋」も大好きだ。切り干し大根入り卵焼きで、切り干し大根の替わりにポテトフライを入れれてオリーブ油で作ればスペインのオムレツになる。ただ「脯」の漢字の意味からすれば「fǔ」と発音すると思うのだが、通常「pú」と発音しているのが気になったりもした。
お友だちはビーフンが好きなのを初めて知るも、メニューのビーフンはスープ麺のようでどことなく気に入らず、焼きビーフンがお好みのようだ。で、ビーフンと言えば台湾の新竹、というのも初めて知った。
会計を済ませて表に出てみれば、お隣に別のレストランがあり店頭には料理の写真付きメニューがあり、美味そうな焼きビーフンの写真もあり、お友だちは「明日はこの店でビーフンを食べて、隣の京鼎樓でチャーハンを食べよう」と訳の分からないことを言い出し、昔の自分を思いだした。
それぞれの国々にはそれぞれの臭いがあるようで、さしずめ台湾だと臭豆腐や八角、そしてそれに類似した薬草みたいな臭いが24時間いたるところに漂っている。それら日本にはない臭いなので無意識に食欲ストレスが溜まってしまった台湾に二度来た私の娘のように、そのお友だちにも出てしまったのかもしれない。
食べなかったけど確かに京鼎樓のメニューにあったチャーハンの写真は美味そうだった。が、15年くらい前だけど鼎泰豊本店で食べたチャーハンは思いっきり大陸中国またはスペインの中国レストランのと同じで、食べ終わると皿に沢山の油が漂っていた。それで言うのならもっと庶民的な食堂のチャーハン(焼き飯)はダントツに美味く日本人に一番合うと思うのだが、お友だちはまだその庶民的な雰囲気の店には慣れてはおらずチャーハンは食べずじまいだった。
その京鼎樓のお隣の店は「伍柒玖(五七九)」という京鼎樓の半分ぐらいの予算のお店だった。
メニューには日本語が並記されていた。店内には日本のノレンが幾つかかかっていて、店の主人は日本が好きで日本語が堪能らしい、とその息子の二代目が流暢な日本語で説明してくれた。
ふとカウンターの手前を見たら幾つかの台南料理の煮物があったので煮玉子を頼んだら、「いちばん」と記されている皿に乗せてくれた。この「いちばん」皿、何故か台湾のお店では流行っているのかあちらこちらで良く見かける。
台湾で言う「排骨(ぱいぐぅ)」はカルビ肉のことでその調理方法はあまり問われないようで、ここではフリッタ仕様でのご飯付き定食になっていた。場所によっては甘辛く煮込んだのもある。試しに排骨だけ欲しいと言ったら、そのカルビのフリッタとして出してくれた。やるね、二代目。
台湾での食堂スタイルで考えたら、中華と言えども餃子はデフォルトではないのだが、ここではちゃんとあったのは、やはり日本人の客が多く、そして森林北路に近いからだろう。この店は、その森林北路と交差する長春路にちょっと北に行ったところにある。伍柒玖はガイドブックには載らないとは思うけど、そのうちや必ずや載るだろう日本人にも合った食堂レストランである。京鼎樓のお隣だから分かりやすい。
京鼎樓にもまた来たいと思うが、どちらか、と言えば、この「伍柒玖(五七九)」に軍杯を上げたいところだ。
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