昔、九州に住んでいた二人の男が 蚕についてしゃべり始めた 「二階に部屋があった」 「養蚕室といった」 「桑を食べる音が 今でも耳に残っている」「すごい食欲だ」 「雨音のようだ」 「パラパラパラパラ ザーザーザーザー」 酒の席でもないのに 男たちの目は喜びで上気している 昔、南の地方で 一体何があったのか
その夜 桑を食べて堅くなった蚕が 星のように屋根に降る