湖
友人が教えてくれました
湖でスケートをしていて水に落ちたら
光のある方へは行かずに
暗い方を目指して行って
ポッと浮かび上がると
そこが表の世界に通じる氷の裂け目なのだと
そうして昨年救かった人がいるのだと
あまり理知的に話すので
そんなものかと聞いておりましたが
夜眠りながら怖くなって
冷たい氷の下の世界を
ウオンウオンと得体の知れない音を聞きながら
いけないいけないと思いつつ
一番明るい光の方へ進んで行くのです
氷の底に触ろうとする瞬間に
またベッドに戻って来たのですが
身体は湖の底面へ降りて行ったように冷たくて
窓の外はいつもと変わらない北国の星の夜です
ああ自分は今本当に湖にいて
明るいまやかしの領域に進んでいるのかもしれないと
心底震えながら青い星々を見つめています