始発駅のホームに 寝台車が止まっている まえ数両は高松行き うしろ数両は出雲行き 薄肌色と蘇芳色 車体の色が眠りを誘う
出雲を思いながら 向かいのホームに立っていたが やがてこんな時間に 出発する夜行列車はないことに気づく
ホームの端まで歩いてゆくと 最後の車両だけに薄灯りがついている 「乗っておいでよ 乗っておいでよ」 半透明な影が数人手を振っている 列車はまったく無音のうちに ホームを出て行く 最後の車輌の行き先は 「不知火」 いちど訪れたことのある もう誰もいない在所