河の石段
昔 自分の部屋の壁に
ポスターを貼っていた
セピア色の河の光景
光 川面を走る光
手前から石段が河に下りている
花崗岩のような石段の
染みのような色や細かくあいた穴まで
今も残る記憶
ポスターの右下に書いてある
パリの朝の光
石段の半分にあたる光
石段を下りてゆくと
魚が脛に腿に胸に頬に吸いついてくる
その先は森になっていて
それでも石段が続く
突然に森が終わると
向こう岸に渡っていて
石段は急に崖に上がり
崖から先は空しかない
叫びにならない声を上げて石段から空へ飛ぶ
そこで目が覚めて
川面を見下ろす石段に座っている
パリの朝の光 光のパリの朝 朝の光のパリ
二年間貯金した
「パリに行くチケットをください」
フランスの航空会社の名前
店は急にセピア色に染まり
壁を魚群の影が過ぎていった