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Time To Time 2011-2013 : 36-6
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パーティー


胸元の大きく開いたピンクのミニドレス

左手に細いビアグラスを持ち 右手で蚊をはらう
五十代のイタリア女


庭園の隅にある仔豚焼き専用のレンガ造りの炉
夕暮れの木立のなかでほんのり明るい



五十名ほどのホームパーティーに
黒いワンピースに白いエプロンのお仕着せ姿の三人のメイド

ピンクのミニドレスの女主人はにこやかに一同を見渡すが
隣の夫の目はうつろ

向かい席の老女と話しながら

肥り肉の若いメイドの後ろ姿を目で追っている

グラスに残るワインより紅い口紅のあと

スライスされた三匹の仔豚は
銀の大皿からそれぞれの皿にもったいぶって取り分けられ
添えもののウイキョウとともに 瞬く間に五十人の胃袋に

仔豚がいない仔豚がいない
もうなくなっちゃった どこ行った



男たちがコニャック片手に談話室に去ったあと

女たちはあらゆることの品定め



もうすっかり夜気に包まれた小道を
仔豚の炉を確かめにゆく
炉の上に豆電球がひとつ点いていて 炉の扉はまだ温かい

ピンクのミニドレスのイタリア女が
草むらに立ってタバコを吸っていたが

突然ウィンクしながらしゃがみこむ

シュロシュロと水の流れる音

私も草むらにしゃがみこむ

身体から流れる液体は チチチチとさびしい音がした

Time To Time 2011-2013

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