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Time To Time 2011-2013 : 36-29
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隣の男


カフェにひとりで入るのは
向かいの席に魂を置いて
薄墨色の世界で眠るため

今日は魂を置く前に
うっかり見てしまった
隣の男
私が十年程前に
心を奪われて読んだ本
三ページ目で突然
それは異次元と知り
鉄の扉が閉じられたように
魂はもう届かないところに
行ってしまった
男は心を奪われて読んでいる

もしもし
そのまま読み続けたら
魂を異次元に持っていかれますよ
それから魂は浮遊して
出たり入ったりするのです
それはこうして休むときは便利ですけど
戻ってこない夜もあるのです

男はジャコメッティの彫刻のように
みるみる細くなって
金属質の音をたてて立ち上がる
魂が青く燃えてスパークし
そのままカフェを出ていった

財布を取り出そうとバッグを開けると
なつかしい本が当然のように
しっかりと収まってそこにある

Time To Time 2011-2013

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