プロバンスのはずれの村で 夏を過ごした 「美しい眺め」という村で
糸杉の実が風にいっせいに鳴り 眼球に住んでいるかのように 黒い鳥の群が視界のどこかにいた オーベルジュの庭には 気弱なシェパードを追いかける 気丈な黒猫
私たちは近くの村の市場に 蜂蜜を買いに行ったり 丘の古い教会を覗いたり 無言で手をつないだりして過ごした
黒い鳥の群が視界のどこかにいた 気づかないふりをして私たちは わざと無邪気にはしゃいでいたが 帰り道 道も丘も車もすっぽりと 黒い鳥の影に包まれた