坂
坂を下ってバス停に向かう
季節の変わり目はいつも霧
朝白く霧に浮いていた酔芙蓉が
夜には薄紫となって身を閉じる
坂道の途中の階段
一歩には長すぎ
二歩には短い
真ん中の自転車道を歩けば
霧のなかを上がってくる灯り
ああと言う声に
振り向いた黒いマントとフード
自転車はそのまま坂を登る
間違えて来てしまった世界
柏葉紫陽花のあたりの左手へのカーブ
坂の右側に道路があるはずなのに
今は霧の晴れ間に
青緑色の水が流れている
白く淡く光るものを浮かべて
間違えて曲がってしまった世界
自転車が下ってくる音がする