門
訪問地で拾った木の実
珍しいものではなく
どこにでもある糸杉や椎の実や栃の実
整理することなく
半透明な緑色の広口瓶に入れられて
植木鉢の間に置かれている
木の実を見ると分かるのだ
自分がどこの地で
どんな門をくぐっていったのか
それは国境の税関
崩れかけた禅寺の山門
工場の電動式ドア
十二使徒が描かれた教会の重い扉
振り返らずに入ってゆく
一粒の椎の実が語る
知らずに通り抜けた門があるのだと
振り返ればそれらはすべて見えるのだと
門は密やかにそこにある
通り過ぎる自分が見える
それらの門には
永遠という文字が刻まれている