HOME > Acci Times >
ボッキ〜中島のアミーゴ南蛮珍コ道中記 5-5
回って回って回って・・・

 ボヘミアンに転身するつもりはないので今日は帰国する為の飛行機に乗らなくてはならない。例のスリに遭いそうになったホテルで目覚めた、いや、叩き起こされた。

 前日のマドリッドでの買いあさり強行軍ツアーに満足できなかったのか、カミさんは空港の免税店をラストチャンスとして照準を合わせたようだ。いきなりウムも言わせぬ迫力で「3時間前に空港に行こう。」と言った。「日本じゃあるまいし、スペインは1時間前で充分だよ〜。」なんて言う雰囲気ではとうていなかった。カミさんに借金をしているダンナは悲惨だ。

 朝7時半、外はまだ真っ暗。
 タクシー乗り場に向かうべくホテルを出たら本降りのように雪がドカドカ降っていた。
 屋根にはたっぷり雪が積っているやや大き目なシトロエンのタクシーが並んでいたが、どれもチェーンを装着する気配はなく嫌な予感がした。
 乗ったタクシーの運転手、スペイン語を喋るアジア人が面白かったのかやたら話しかけてくる。それも90km出しているのに運転しながらエクソシストのように首を180度後に回してだ。仕方がないから会話をしながら私が前方を注意して見ていたが、あまり有効な策だとは思えなかった。

 走って行く途中、やはりスリップしての追突事故が幾つか見かけた。さすがに運転手もビビったのか「安全運転、安全運転〜!」と言いながら減速して60km。もちろんその時も首を180度後に回して私達へにも安全運転宣言してくれた。スペインのタクシーは非常に礼儀が良い。日本のタクシーなんて振り向かない。前向いて話すもんね。でもこの場合、礼儀が悪い方が良いと思った。

 私は心配になって「おじさん、おじさん、私達は11時半の飛行機だから、まだ3時間以上も余裕があるから、のんびり行っても大丈夫だよ。」と。そしたら、それを察してか「ダイジョーブ、ダイジョーブ、スペインのタクシーは運手が上手いし安全運転だよッ!」と言ったのだが、それなら途中で追突事故で立ち往生していた2台のタクシーはどうなっちゃうんだ?と思った。たぶんこの「安全運転」とは、事故を起す直前までの事ではないかと解釈した。

 前述の知人の車もそうだが、このタクシーのワイパーも確実にワイパーの役目が違っていてフロントガラスの前で2本の黒い棒が左右に行ったり来たりしているだけだから余計前が見えない。スペインではこう云う破滅的なカーアクセサリーが流行っているんだろうか。たぶんスペインの教習所では「ワイパーは消耗品なので古くなったら取り替える。」と云うのを教えていないのだと思った。またこの講習は選択科目なのかもしれない。

 走る車窓から周りの車を見ていたのだが、どれもみんなチェーンをしないで走りまくっている。道路の地肌は少し見えるのだが日本では、いや、何処だって確実にヤバイ状態だ。こう云う時、夫婦と云うモノは一心同体で同じ事を考えるのか、カミさんは恐怖で固まっていた。

 車間距離をタツプリ取ってくれたのが幸いなのだが、雪道でやるべき「急発進、急ブレーキ、急ハンドル」を良くやるのがこの運転手。50m先の車のブレーキランプが灯くと、待ってましたとばかりの急ブレーキ!車間距離が迫ったと思ったら、これまた待ってましたとばかりのトップからセカンドへのシフトダウン!私は日本で運転免許を取って本当に良かったと思った。
 思い出を一杯詰めてスペインを離れる外国人への一つのナイスなパフォーマンスなのだろうか?ナイス過ぎる。

 なーんて思っていたら、急ブレーキでタイヤがロックして後輪が振れ出してスピン〜!!!あわわわわーーーッ・・・・追突を恐れてすぐ後を振り返ったが、幸いにも後続車がいなかったので、スペインの高速道路でのメリーゴーランドを楽しまされる事になった。

 止まってみれば1回転半していて、来た時の方向を向いていた・・・。「ごめん」と云う言葉さえ言う余裕がなかったのか、あんなにお喋りだった彼は一言も喋らず、首も角度1度も回さず、終始無言で空港へ向けて走り出した。でもチェーンはしないのよね。

 空港に着いて、先ほどの緊張を残した口ぶりで「帰りの飛行機気、付けてね。」と言ったので、「アンタこそ、帰りの道気を付けなよ〜。飛ばしちゃだめだよ〜。」なんて、彼の父親になった気分で言ってしまった。

 スーツケースをゴロゴロと空港の入口に入った時、カミさんと二人で「やっと着いた!と云うのはこう云う時に言う言葉なんだね!」と確認しあった。

(了)
■ 追伸

 4年前の新婚旅行以来のカミさん同伴のスペイン旅行なので、スケジュールも当然カミさんの仕事の都合になり、航空会社ぼったくり殿様商売時期、つまりハイシーズンの年末年始の8日間となってしまったのが1996年の暮。おまけに行くことをスペイン在の友人達に宣伝してしまったので、滞在期間は変わらないのに、訪れなければならない場所が増えてしまったのだ。

 夜マドリッドに着いて1泊、翌日一番の飛行機でグラナダに行き友達に会い、その日の夕方バスに乗ってグァディックス泊。2泊目の午後バスでマドリッドへ。そこで他の友達に会いブルゴスへ。そこで2泊してマドリッドに戻って泊り翌日帰路へ。

「スケジュールびっしりのツアー旅行よりもタイトだ!」とカミさんに叱られてしまった。

 正月早々、体育会系ツアーを敢行してしまったので、その罪滅ぼしに2週間後、沖縄リゾート2泊行きを余儀なくされた。その毎度の珍コ道中記は、トップページ→アルバム→旅行の「ボッキ〜中島のハイサイ・メンソーレ」。


  1 2 3 4 5  

戻る