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ボッキ〜中島のアミーゴ南蛮珍コ道中記 5-1
スパニッシュ・ドライビング

 スペインの町と町を結ぶ道路は快適で交通量は少なくて高速道路を走っているようだ。とすれば本能的にアクセルを踏みたくなるってもんだ。だよね。
 とにかくスペインの車は飛ばす。それも2000ccクラスじゃなくて殆どが1000〜1600ccクラスで平気で130km以上をキープ。しかもスペイン国内またはスペイン向け輸入車の設計図の実サイズは四捨五入してあるのか、はたまたガス自殺防止条例に乗っ取ってか、どの車に乗っても常に何処からか隙間風が流れこんできて、車内からでも外の音が良く聞こえるようになっている。

 ところで、若者はお金がないから当然車を持っていてもボロを通りこして「良く動いているな?」と云う、日本ならスクラップ行きなのが多い。
 数年前で恐縮だか、そんな友達の車に乗った。椅子が全部違う。壊れていたから適当な所から持って来て設置したらしい。だからビス止めなんてしていなくてただ車内に置いてあるだけと云うシロモノ。だから揺れれば当然椅子と一緒に揺れなければならなかった。その座席の高さを調節する為にレンガが挟んであった。ワイパーは?と云うと、なんとモーターが付いていなくて手でその都度専用のハンドルを回す。ハンドルの真ん中に電線が2本むきだしで出ていて、それを繋げてクラクションを鳴らす。
 足元になんかの板が置いてあって、それをどけてみたらウゲゲッ、片足が充分に通るぐらいの穴が空いていて、走っている地面が見えた。
 「コレ、あぶなくないのか?」と、言うと友人は「だから乗る時には気を付けて、と言ったんだ。」
 まぁ、確かにその通りなのだが。うーん。

 話は戻って・・
 夕方首都マドリッドからブルゴス(北部の町)まで、久しぶりに会った友達の車に乗せてもらった。
 道は高速道路のように3車線ぐらいあって快適だ。隙間風と騒音を体一杯で受け止めながら、ふとメーターを見たら135km。だんだん暗くなってきた頃、雪がさんさんと振ってきた。いつの間にやら街灯も何もない真っ暗な道路に変わっていた。メーターを見たら130km。峠を幾つも越えるので場所によっては凄い霧で視界1m。おそるおそるメーターを見たらさすがに危険を感じてかスピードダウン。でも110km。
 雨まじりのみぞれに変わってきた。ドシャ降りになり前も道路の曲り具合も分からない。でもメーターを見たら110km。久しぶりの再会にカミさん共々車内ではなごやかな会話がかわされていたのだが、延々とメーターが100kmを下がらなくなったあたりから二人とも寡黙になり、全神経を視神経を集中させた。当然その目線の先にはメーターがあった。
 スペインのワイパーって金属でできているのか、動かせば動かす程見えなくなる。「ちゃんと無事にブルゴスに着くのだろうか?」たぶんカミさんも心の中で十字を切っていたに違いない。
 翌日のテレビの報道では私達が通って来た道路で沢山の追突事故があったことを知らせていた。あんなに雪が降っていてもバスもみんなチェーンしないで飛ばしていたから当然なのだが、そこを走って無事故だった私達はむしろ好運だっと言うしかない。
 チェーンとかスノータイヤしろよな、スペイン人!

 ところで、車ドロボウは外国では日常チャメシゴトらしく、ご多分に漏れずスペインもそのメッカだ。  狙うのは一つ、なんとカーステ。これが一番即換金できるらしい。車はボロいから持って行かない。だからスペインのカーステはワンタッチのはめこみカセット方式で、車から降りる度にそれを引っこ抜かなくてはならないと云う面倒さ。
 飲み屋や喫茶店でカーステを小脇に抱えてコーヒーを飲んでいるのを良く見かけるが、ちょっと変だ。


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