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昔に出席した時のアルバムを後日見せてもらったことがある。
大きさは日本で普通に売っている大き目のアルバムと同じだが、厚さは3冊分ぐらいはゆうにあった。
プリントサイズも日本のように2Lとかサービスサイズのように小さいのではなくキングサイズの四つ切だ。それも全てが1ページに1枚だからかなりの枚数で経費もかかる。10年くらい前の事で、値段は50,000円。今は日本と同じ100,000円ぐらいになっていると思う。
挙式の数時間前、新郎新婦はそれぞれの家で着替えとか支度の準備をしている。そこにカメラマンがやってきていろいろ写真を撮ってくれるのがスペインスタイルだ。
新婦は着替えに時間がかかるので、たいてい新郎の家に先にやってくる。
今回はもうじき独り立ちしそうなくらいのアシスタント付きのツーカメ体制だ。カメラを見ると、なんとブロニカの645をそれぞれが持っている。ストロボは有名なメッツのグリップタイプ。
日本なら業務用廉価タイプのISO400のネガフィルムにクリップオンのTTLで済ませてしまっているが、こちらは、ISO400とISO100を取り混ぜてポイントごとに単体露出計で測っている丁寧さがある。
日本だと駆け出しのカメラマンが多いが、こちらは私と同じ歳ぐらいのメインカメラマンとサブカメラマン。日本のような写真室での撮影がないので、これがその役割を果たしているとすれば納得はする。
新婦だけじゃなく、家族なども一緒にいろいろな場所で撮ってくれる。玄関、ロビー、リビング、食堂、階段などなどでだ。みんなポーズをとるのだが、目線はカメラではなく別な方向を見ている。
両親のツーショットを撮るのだが、父親は空を見、母親はその父親の顔を横から見ている、と言った日本人からすれば赤面してしまうようポーズが延々と続く。
思わずカメラマンに
「スペインではカメラを見ているポーズって撮らないの?」
「日本ではそうなの?」
「うん、たいていそうだよ」
「ふぅーん?こっちではあまりないなぁ。」
素人がプロっぽいポーズを撮るほうがよっぽど恥ずかしいと思うのは日本人だけの感覚なんだろう。これは意外と台湾、香港、韓国でも良くこういうポーズで撮られているからだ。
でも見ている私の方が恥ずかしかった。
室内での撮影を見ていると、あれれ、天井とか壁とかを使ったバウンス撮影をしていない。どこでどのように撮ってもストロボダイレクトだ。多少シャッタースピードは落としているとは言っても影が強くて目立つだろうに。バウンスによるカラーバランスの崩れが気になるのか、この辺はじっくり聞きたかったのだが、またもやして聞きそびれてしまった。
それでもお国の写真業界の情報交換をするのは面白い。
「やはり日本はデジタル?」
「ブライダルにしろ少しずつ増えている感じかな。でも銀塩も残っているよ。そっちは?」
「デジタルも良いのだけど、画質やトーンがなぁ?」
スペインだってそれほどカメラマンの単価は高くはないのに、クオリティを先にこだわるところは見習いたい。日本だとまず経費削減、デジカメの方が処理が楽などと言うのが主なのに、ちょっと反省モード。
相手は仕事中だし次には新婦宅へ行かなければならず邪魔にならぬようあまり突っ込んだ話をしなかったけれど、最後にちょこっと「レフ板ってスペイン語で何て言うの?」
しばらく考えてから「Pantalla(モニターの意味だけど形状からの隠語)」
専門書では、Reflector という単語があるが、この「パンタージャ」の方が言いやすいな。
次にそのカメラマンと会ったのは、市役所での挙式が終わり披露宴までの短い間に新郎新婦を撮っている時だった。
市役所の2階のバルコニーなどに連れ出していろいろ撮っていた。その後すぐに近くの公園へ行き、披露宴始まるぎりぎりまで撮っていたのだと思う。
披露宴ではサブカメラマンが写真を撮っていた。後は若いのに任せてとメインカメラマンは帰ってしまったのだろう。
宴もたけなわ、時計も11時を過ぎた頃、トイレに行きふと隣を見たら、うげげ、メインカメラマンが私と一緒に生理行為をしていた。
「え、帰ったんじゃないの?今までずっと撮っていたんだ。食事はした?おなか空いているのなら何か持ってこようか?」
「ありがとう、ちゃんと食べて飲んでいるよ。あともう少しかな」
そう言いながら彼はトイレから去っていった。
ワインを持って新郎新婦のテーブルへ挨拶に行こうとした途中のテーブルでどっかで見たことのある人がいた。あのサブカメラマンだ。座って飯を喰っていた。いいな、こういうの。日本じゃあり得ない。
初から一緒に付き添っているカメラマンも招待者の1人として数えられているのだろう。
のべ9時間以上連続で撮影していたスペインのブライダルカメラマン、お疲れさまでした。
さてその出来具合とお値段はハウマッチ?
次回行った時には必ずチェックして聞いてこようと思っている。