蒲田の帽子屋
頭の形どおりに丸くて縁が少し上を向いた
フェルトの帽子
深緑とレンガ色が並んでいた
それは蒲田の帽子屋で
被ってみたら自分の年らしい顔になる
帽子の値段は給料の半分
一週間パンと紅茶で過ごそうか
黒があるかと聞いてみた
半分解放される期待をこめて
「お取り寄せできますよ」
嬉しく切ない返事
ブドウパンを食べている
紅茶に浸して食べている
蒲田の帽子屋の帽子を被って
洗濯ものを干し
残りのパンを袋に詰めて
労働に出かける
骨になってしまった体に
帽子だけ浮いているので
人々が振り返る