スチーム暖房の煙が あちこちの煙突から上がり それに届くくらいに低く下りて来た雲が 最後には霧だか雨だか分からなくなって 町全体を濡らしている どの家の中にも時計が有って 人々はお互いを守って確かに暮らしているが 路地を歩けば 冬の町を支配している影を見る 壁と壁の間を 迷い鳥が取り通り抜けることもあるが それよりも速くかすかにヒュッと音をさせて 歩く者の右横を追い越して行くもの その後には銀色の粒子が浮かんで消える 路地裏から古い煙突を見れば それが下りて来る気配がする