「こんなに葡萄に囲まれていると 必ず不幸なことが起きる」 やって来た親戚がつぶやいた
西の窓すべてをふさぐ葡萄 南がわに在る葡萄棚 私は葡萄の家で育っていったが やがて一家は 海風の吹き抜ける 光の突き抜ける家に引越し それぞれが 葡萄の蔓を引きずって 新しい生活を始めた
不幸など起こるはずがなかった あの葡萄の家を出たことが これ以上無い不幸だったのだから そしてそれ以上の問題は それ以降 幸や不幸の意味が よく分からなくなって行ったことだった