写真集
1 9 8 9 - 1 9 9 1
Time To Time 1989-1991

 哀しみの泉


石を伝って水が降りている
近くに泉が在るのだ
その水に触れてみるがいい
水は手を入れると青く染まる程透んでいて
青草の様な味がする
旅人はそこで靴を脱いで
足に水を懸け顔を洗えばいい
近くの通りがかりの者は
昨日よりも少し老いた顔を
水面に映そうとするがいい
だがこの泉に訊かれたら
応えてはいけない
「自分の人生が好きですか?」などと
泉はつまらなく信実な問いをする
ああ、それに応えたらいけない
大人になって久しく
やっと怖いものも消えかけた時に
その不意打ちに会ったなら
心は子供の頃の哀しみでいっぱいになり
死ぬまで苦い泉の水を
体の隅で流し続けることになるのだ
詩人として
旅人として
永劫の命として
ああ、それに応えたらはいけない

Time To Time 1989-1991


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