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36-19
 情 景

キノコの群生の向こうに
火力発電所の煙突が二本立っている
曇り空の煙突の赤い標示灯は
モノクロフィルムにわざと色付けをしたように
情景に毒を与えた
わたしは半コートのポケットから
箱入りのラスクを取り出して
一片を口に入れた
ラスクの粉が喉に当たり
少し咳き込んでいるうちに
朝一番の旅客機が
煙突の上を斜めに昇って雲に隠れた
咳とともに涙がこぼれ落ち
旅客機のマークを確かめられもせず
赤い標示灯が涙に滲むうちに
キノコは朝露をふるい落としながら
膝下までに背を伸ばしていた

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36 - 19

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