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36-9
 鳥

森でけたたましい音がした
野鳥の鳴き声や獣の吠え声や
鳥が翼を広げる音や
一斉に風になびく木々の葉の音だ
何もかもがいっしょくたになって
森は大層賑やかだった
次にゴウと窓に風の一撃が有り
部屋はシンとした
何も起こってやしないのだ
いつもの都会の部屋の夜だ
部屋は蒼く沈んでいたが
それよりもなお蒼い影を見た
大きな鳥だった
あの大騒ぎの後に
必ず現れる大きな鳥だった
鳥は翼に顔を埋めてじっとしていた
よく見れば
羽は光を失い
鳥は眠ってなどおらず
目を閉じているだけなのだと分かる
今度こそは言わねばならない
“おまえは何なのだ”
“なぜここにいる”と
機をうかがった
失敗してはならなかった
—罪の意識の固まりか
—忘れてしまった過去か
—否
心に哀しみが広がった
ゆっくりと言葉を噛しめた
哀しみが部屋いっぱいに流れ出て
鳥はそれを翼でくるむと
閉ざした窓から音も立てずに出て行った
森の匂いがした
心は空になった

Time To Time

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