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36-7
不徳の海

思い立って包丁研ぎを始める
ジャリジャリキンキンと
包丁は刃こぼれも含めて
あいまいな音を立て
白い壁の隅に付いたカビに目を止めた時
歯止めのきかない一撃が
左手の薬指を縦長に襲った
爪は三日月型に飛び
第二関節までの切れ込みから
どうしようもなく血とリンパ液とタンパク質が流れ出る
指を振りかざして踊りながら
さっきのカビに血を飛ばし
疼痛の中に
道徳心を捨てたいなどと脈略の無いことを考えながら
ベッドの上に身を投げ出して
そこいらじゅうで血を拭きまくり
形にならない泣き笑いをしながら
不徳の海に溺れている

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36 - 7

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