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36-13
 君の瞳

君の瞳を見てしまうと
思わず頭を下げて
胸の動悸を静めなければならない
悲しいことだけれど
それは恋の予感のまなざしでなくて
悲しいことだけれど
それは僕に恐怖を与える

君はオランダの画家で
聾唖者だったアーフェルカンプを
知っていますか
彼は湖でスケートする人々を
細かに巧みに画いたのだけれど
ほとんどの人の顔はしゃべっておらず
ちょっと哀しみを感じさせるその絵を
見たことがありますか

君の瞳に
僕はアーフェルカンプを思い浮かべる
君の瞳は人を追いながら
あくまでもそれは輪郭だけで
例えば
駅のホームで人々を見ている時も
あくびする男や
子供を呼ぶ母親や
物を落として慌てて拾う少女の姿も
骨と肉付きだけしかとらえていない
彼等の動作の目的を
君は決して理解しようとはしない
君は階段の脇の陽の当たらない場所で
凍りついたように立っているんだ

アーフェルカンプの瞳は時として
全く空洞のみとなり
そうして
君にも
僕にも
恋の予感が来る前に
まずたそがれが訪れる

Time To Time

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