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アポ無しスペイン人突撃来日

 2006年9月、友人が経営する東京ビジネスホテルから携帯に電話があった。
 専務か副支配人の中国人、元さんからかなと思ったら、見知らぬ女性の声で「アルフレッド・○×▲□★様がお見えになっていて、中島写真工房様が予約してあって泊まりに来たとおっしゃっていますが?」
 「アルフレッド?誰、そいつ。何人ですか?スペイン人ですか?」
 「英語を喋っていますが」
 英語圏の外国人の知人は皆無なので(悲しい)、「何かの間違いでは?私には記憶ありませんが」
 「ちょっとお待ちください」
 おいおい、そのアルフレッドを呼ぶなよ。英語喋ったって分からんよ(もっと悲しい)。
 「聞けば、サンジョさんの友達と言っていますが」
 「へぇ、分かりました、変わってくれますか?」

 知らないヤツだけどサンジョの友達なら、スペインのブルゴスからだ。
 聞けば、予約依頼のメールを彼そしてサンジョからも私宛に送信したそうだが受信していない。たぶん件名もなく「Hola Ken」とかを最初に記さなかったのだと思う。そういうのはそのままゴミ箱だからなぁ。
 おまけにイサベル(通称、イチャ)の妹も一緒で彼はその職場の同僚。

 イチャは10年くらい前にロベルトという旦那と一緒に近所に住んでいて、私たち夫婦が身元引受人になっていた間柄。
 因に、犯罪等を犯して強制送還になった場合の飛行機運賃は身元引受人(私だ)が支払う。誓約書にそれが記してあった。おそらくビジネスクラスだと思うけど、ディスカウントチケットではなく正規料金だ。
 だったらイチャが最初に連絡してこいよ。
 なんで妹の友人のサンジョが、と憤慨するも、アンダルシアにしろ北部にしろ、この辺、計画性のないアポなし突撃気質はスペイン人らしいと、昔を思い出して諦めた。はぁ〜。

\"親友のサンジョ\" 因にサンジョ(写真左)は、昔、日本に何年かいて空手を習っていたので日本人よりも日本人らしいところがあるのだが、顔で損していて、うちの娘に「あの怖い顔をしたサンジョね」なんて言われている。
 それでも結婚することができ、今春に来るはずだったのが足を骨折して来年の1月に来る予定だ。回数からすれば2年ごとに来日しているから大したもんだ。
 私なんてスペインに何回も行くも、ブルゴスに行ったのは10年前に行ったきりだ。

 話は戻るが、そのホテルの受付の女性にお礼を言って電話を切る時に「この私の携帯番号をメモして彼に渡して貰えますか」と聞いたら
 「いえ、そのお客様から頂いたメモでお電話しています」
 おそらくサンジョに「最悪、そのケンの携帯に電話すれば大丈夫だよ」とでも言われたのだろう。
 運良く彼らのメールを受信して私が事前に予約していれば、滞在中私に電話をしてきただろうか?確率からすれば50%だな。今回のようにトラブルが発生するとその確率が上がる。現地ツアコンじゃないぞい。

\"サンディとイサベル妹\" 受話器にて彼が私に言った単語を思い出してみると、sinceramenteとかcortesano、simpáticoなど普段聞きなれない言葉を言っていた。
 もしかしたら「ウスラとんかち」「すっとこどっこい」「すかたん」の意味じゃないか?
 たいてい欧州からの成田着は午前中だ。
 だから遅くとも12時のスカイライナー、または新宿駅行きのリムジンには乗れたはずだ。
 場所は新宿厚生年金の裏で、丸ノ内線「新宿御苑駅」から徒歩15分。
 にもかかわらず電話がかかってきたのが16時半。
 言葉分からず、また初めての日本なので、かなり迷ったのだと思う。だから地獄で仏に会ったように聞きなれない言葉を発したのだと思う。一応は感謝されていたのね。

 こんなに迷って気をもむのだったら事前に確認するとかすれば良いではないか、と言うと必ず「でも、このようにちゃんとなったじゃないかい」と返ってくる。
\"イサベル妹と\" 言い訳させたらスペイン人は世界一だ。

 名前は、アルフレッドではなく、アンティアゴ(通称サンティ)とエレーナ。
 我が家へ呼んで我が家族を紹介したりした後に、いろいろお台場や浅草に行ったそうで、30日土曜日に大阪へ出発するとのこと。
 金曜日にサンティから電話があり、最後の東京の夜に一緒に飲まないか?とのことがあり、久しぶりに東京ビジネスホテルに泊まった。

 仕事と用事を済ませてホテルに着いたのは21時。
 内線で呼び出したらサンティが出て、エレーナはシャワーを浴びているところ、と言う。
  「エレーナは、歩きまくったのでマメができ、疲れ気味で出られない」との返答。
  「じゃ、二人で飲みに行くかい?」
  「え、私とだけで良いの?」
  「いいよ、オカマのカップルで行こうぜ」
  「じゃ、その旨をエレーナに伝えるから5分後にロビーで」

 エレーナの姉イサベルにとっては身元引受人も含めた世話になった友人という図式がなりたつ間柄で、明日東京を発ってしまうところでは、ちょこっとでも顔を出して挨拶をするのが礼儀と思うも、これは「日本の礼儀」なのだろうか、結局彼女とは会うことがなかった。
\"我が家にて\" 初めに日本を訪れあちらこちら不慣れな文化にまみれて過ごした数日はかなり疲労を増幅させ精神的にも他人を思いやるゆとりさえも失せてしまっているのもあるかもしれない。
 でも彼女は35才。その状況とその年齢でどう判断するかは、その当事者のグローバルレベルに起因するところだと思った。

 因に、エレーナは彼がいて同棲しているが(欧米では多い)、その彼は旅行が好きではないとのことで、同じ職場のサンティと今回来日した。
 でも部屋はツインだ。これが不思議だ。プライバシーは安上がりより優先されないのがスペイン感覚なのか?
 私も昨年の夏、詩人の草野早苗嬢とアンダルシアに「二人」で行ったけど、部屋は「別々のシングル」だった。仮にそういう関係になったとしても、そこからツインという感覚はないな。いろいろあるのでしょうな。

 サンティと御苑界隈の居酒屋をはしごしていて、
  「ケン、この間、トンでもない(信じられない)格好をしている若い女性をたくさん見たよ」
   「どんなの?」
  「髪の毛が金色でコンドルの巣のようなアフロとか腰まである長髪でさ、口紅が白とか金色なんだよ」
  「それだけ?」
  「顔とかの肌の色が濃い茶褐色なんだよ」
  「健康的に日焼けサロンに通っているとかじゃねぇかい」
  「いや、そういう色じゃないんだよ、黒なんだよ」
  「アフリカ人と見間違えたんじゃないかい」
  「いや、絶対日本人か少なくともアジア人だよ」
  「何処で見た?」
  「渋谷と新宿でさ・・」
  「原宿はさぁ、ティーンエージャーが多くて、人と違ったことがイコール個性と思っているからそんなのがわんさかいるのだよ。銀座とかお台場はいなかっただろ」
  「じゃ、新宿という町は?」
  「あ、新宿はアジアのニューヨークだから、常識なんてないよ」
   妙に納得して「なるほど〜」
  「今度会ったら英語でHow mach?と聞くのが良いぞ。みんなプチ売春婦願望者だからね」

 ヨーロッパ(オランダとスペインしか知りませんが)ではトッピングがあって、おフェラは+1,000円、スペイン語なら con chupas と言ったら、それは「フレンチ」というのだ、とサンティが力強く述べていた。
 オタクの入った29才のサンティ、あっちこっち行っているな。
 ほほに軽くするのをフレンチキスと思っているのは日本人だけかも?  

2006.9

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