浅識であってもそれなりに沖縄戦とひめゆり部隊については中学の頃から「女体の神秘」の次に興味があり、いろいろな史書などを読んだので、初めて行くひめゆり記念館は私にとって長年の文通相手とのご対面と言った感じだった。
しかし展示されている説明等は以前読んだモノと同じであり、写真も複写でオリジナルプリントではなく、野戦病院の地下壕の復元ジオラマもあったけれど何処か子供ダマシ的だなぁ、と感じた。
しかし結構な人だかり。近寄ってみたが人が多くてそのジオラマの内部は見えなかった。それらを説明している年寄りのおばあちゃんの声だけが聞こえて来た。
「私達は、こうやって」
「私と一緒にいたAさんは」
「私の仲間は」
昔のひめゆり部隊の説明をしているのだが、第一人称で語っている。抑揚も感情もなく、ただ淡々と誰に向かってでもなく、声が、彼女の声だけが館内に響いてくる。より重量感があり、今まで私が知っていたちっぽけな知識がふっ飛んだ。同じ女性であるカミさんは、やや目頭が熱くなっていたようだ。
入口には最後のひめゆり部隊の立てこもった壕があり、奥の見えない暗闇が「ひめゆり」の哀しみにシンクロさせていた。
ところで、男なら無条件に大好きなのがミリタリーグッツだ。
米軍基地のある沖縄には、こう云うミリタリーショップが結構あって例外なく私も大好きで、ひめゆりの帰りに、いろいろ見てはワッペンとか服とか米軍放出品などを物色していた。
カミさんは途中で気分が悪くなったみたいだ。ひめゆりを見たばかりのところでこんな店に入ったからだと言う。なるほど、無神経で申し訳ない。
その夜、毎度だが酔っ払った後にゲーセンに行った。
カミさんは常識クイズに余念がない。私は機関銃と爆弾で敵をやっつけるシューティングにハマった。
これ、1面クリアーすると自分の階級が上がり、なんとその名称が旧日本陸軍方式で、上等兵、大佐、中尉、中将とか。おいおい、大丈夫かよ。ここは沖縄だぜ。
先のカミさんのミリタリーショップでの事といい、ちょっと不謹慎かなぁ、なんて「ひめゆり」に思いを馳せたのだが、気が付いたら2000円ぐらいつぎ込んでいた。最後は中将になっていた。あれ、牛島中将と同じだ、うーむ。
「旅の恥はかき捨て」という諺があるが、パンツを降ろして女に抱きついてしまうぐらい酔っ払っていても、最後の理性で絶対やれないのが、そう、たまごっちのライバル、プリントクラブだ。通称、プリクラ。
背景を無地にするが為に垂れているスクリーンが、おでん屋ののれんを思わせる。その下にプリクラやっている人の足が見えるのだが、殆どルーズソックスで、そこに並ぶ行列の殆どもルーズソックスの女子高校生達。
賑やかな国際通りのド真ん中で、そんな制服達に混じって並んでいる私達夫婦はどう見てもアンポンタンだ。
やっと自分達の番が来て、やり出したらこれが面白い。
なんでもっと前からやらなかったのだろうと、詰まらない理性を持っていた事を後悔し、後の行列なんて忘れて夢中になり、気が付いたら6枚のプリクラを握りしめていた。
翌朝、窓から見える那覇港を撮ろうとカメラを構えたら、ギョギョギョッ、至る所にプリクラが貼ってある。レンズフード、ヘリコイド、ペンタプリズム、裏蓋、底蓋。なんだ、なんだ、
「ケンちゃん、昨夜酔っ払ってベッドの上で一生懸命プリクラをカメラにペタペタ貼りまくっていたじゃない。覚えてないの」
プリクラは、鏡に写るような逆像のシール。
こんな自分の写る小さいシールをいろんな所にペタペタ貼る事自体、何処かしら虚像的だからこれで良いのだ。
指を鼻にツッ込んでニタァっと笑っている私のプリクラが、唯一沖縄のお土産だった。