Cueva、クエバを辞書で引いてみると、洞窟とか洞穴と書いてる。確かにサンタンデールにあるアルタミラの洞窟は有名だ。
スペインの町グァディックスにもこのクエバがあるのだが、こちらはちゃんと人が住んでいる一つの家の事だ。今でも数千年も前のいでたちで石斧とかヤジリを持って生活している原住民族と想像してしまうと、そこに住む人たちに叱られてしまうが、辞書で見る日本語でのクエバの意味は、そう云う想像でしかないのは、文化の違いだろう。しかし構造的には、硬い岩を掘って作った家に住んでいるだけと考えた方が分かりやすいかもしれない。
グァディックスは地理学的にも珍しい場所で、硬い地殻でできている。だから穴を掘ったところで崩れるとかは殆どないし、日本では頻繁に起こる地震も稀有である。マラガ、グラナダでも、このクエバを見かけたが、数量からすればこのグァディックスにはかなわない。
岩を掘る訳だから当然、マンションとかに比べたら狭い感じがするが、日本のワンルームマンションよりは確実に広々としていて、部屋数も日本の比ではない。
へぇ、岩を掘ってその中に住んでいるのか、なんて、やや見下した印象を受けるのは良いが、実際に見てみると見上げた印象になってしまうぐらい豪華だ。内装の色使いや飾り方など、日本人からは到底思いもつかないくらいお洒落で綺麗だ。
岩の中だから、夏は涼しくて冬は暖かい天然のエアコン付なのは嬉しいが、唯一配水処理の問題があり、トイレや風呂、洗濯などの水関係は、庭のそれ専用の小さな小屋で行われている。
それぞれのクエバにはちゃんと郵政省の青い番地表示板が打ちつけてある。この山は誰のだ?賃貸料はあるのか?買う事ができるのか?勝手に掘って住んでも良いのか?などの疑問がクエバぐらい山盛りであったのだが、つい酔っ払ってしまい聞くのを忘れてしまった。誰か取材費として航空券、できたらファーストクラスとかをプレゼントしてくれたら望外の喜びである。
旅行雑誌、地球の歩き方スペイン編では、なんと、クエバを見に行こう、としか書いていない。おいおい、人が住んでいるんだってば。もっともスペイン語を喋れなくたってボディランゲージで家を見せてくれ、と言って断るスペイン人がいたら、それは冠婚葬祭とかで忙しかったとかぐらいで、中に入ってワインとかをご馳走になれなかった確率は0%に近い事を断言する。
クエバ博物館もあるのだが、江戸時代、敬意を示して言えば明治時代の市民の生活風景を紹介しているような展示内容で、余計な誤解を外国人に与えるような気がしてならない。
内部の写真を撮ったのは、例のホアキンのお母さんが住んでいるクエバだが、クエバの集落を撮った写真のような外郭あたりではなく、中心の大聖堂から近い場所にあった。現在、お母さんはホアキンの家の側のピソに住んでいて、ここは空き家になっている。ふふふふ、将来ここに住もうと思っている。
マドリッドからアルメリア行きの特急タルゴに乗ること6時間。
飽きるぐらい大平原が延々と広がり続けるが、グァディックス近くになると突然車窓が変わる。荒々しい岩肌をむき出しにした岩山が並び、そこにクエバの象徴である無数の白い煙突が身近に見え始めてくる。
タルゴの汽笛でふと前方を見たら、あの懐かしいグァディックスの大聖堂が見えてきた。