我亦紅

湿原を暗緑色のジャケットで
水に沈むような木道を往き
風に背を曲げて寄ってきた我亦紅の
ひとつひとつに名前を付ける
ヨハネ-アブラハム
ペトロ-ガブリエル
山の稜線は背後に白い光を見せ
黒々と輪郭を現した
五十メートル程行った所に
右へ細く抜ける小道があって
キジが三羽カヤに首を突っ込んでいる
私はもうすぐその光景を見るはずだ
この一連の光景を
そっと進めている大きな手が在る
それがこの秋の夕暮れを
しっかり腕で抱いている


「1989から1991」の目次へ戻る
トップページへ